MENU

 【紹介・感想】 『死ぬことと見つけたり』著者 隆 慶一郎:現代人に突き刺さる爽快な死生観

こんにちわ 今回は、自分の人生観を大きく変えた名著をご紹介させていただきます。この爽快感に酔いしれる事間違いなし、ぜひとも本書を読まれることお勧めいたします

目次

『武士道とは死ぬことと見つけたり』とは、どういう意味?

まず、タイトルが秀逸で、刺激的ですよね。そうであるがゆえに手に取るのをためらう気持ちにもなります。

『武士道とは死ぬことと見つけたり』とは、死ぬべき時に臆することなく恥ずることなく潔く死ぬ事を常とし、その極まる覚悟や信念によって、自由の境地を得て武士としての職務をいかんなく果たすことができる。

という意味ではないのかと自分なりに解釈しました。

あらすじ

①死ぬことと見つけたり 上巻

目覚める前、思念のなかで猛虎の爪に引き裂かれ、頭蓋が割れるさまを実感する。葉隠武士、斎藤杢之助独特の”死の鍛錬”-。島原の乱で一番乗りを果たしながらも藩召抱えを拒絶、生涯浪人を貫いた杢之助が鍋島藩にくすぶる龍造寺家の遺恨を断ち切り、権力をほしいままにする老中松平信綱の鬼謀を挫く

引用元 版元ドットコムより
STEP
物語の冒頭に目覚める時に日課である”死の鍛錬”を行うことによって、一日の始まりを死人とする主人公の斎藤杢之助。

のっけから、いきなり死ぬことになり度肝抜かれることになります。そんなことを常とする杢之助の朴訥とした姿に次第に心惹かれるように物語へ夢中になっていきます。

STEP
島原の乱での颯爽とした戦働きと褒章に対する執着や野心など一切ない清々しさ

現代人の我々からすれば、仕事での成果に対して、正しく評価され、それに見合う報酬を頂戴することにいささかの疑念もなく、仮に違える様な状況となれば、すぐにでも不平不満を口にする自分とは真逆の考えだと改めて認識します。自分自身の利益優先の考えや様が何だか恥ずかしく思えてきます。

STEP
権力の中枢である老中に対して、主君を守るために微塵も臆することなく行動する杢之助

他の時代小説にも時の老中と対峙することは、しばしば見られますが、杢之助の行動がこれまた痛快であります。

②死ぬことと見つけたり 下巻

死人斎藤杢之助の前に次々と現れる陋劣な輩。金縛りの術で魔剣をもてあそぶ松山主水、好色強欲な富豪高木彦右衛門、甘ったれの若殿光茂、そして、陰に陽に鍋島藩取り潰しを画策する松平信綱。「さあて、松平伊豆を殺しにゆくかね」杢之助の”いくさ人魂”に火がついた。

引用元 版元ドットコムより
STEP
次々と現れる陋劣な輩との数々の対決

時代小説に無くてはならない対決ですが、死人と対決する相手も尋常ではありません。

その対戦相手の特徴もなぜか現代の課題をも表現されているように感じてしまうのは、私だけでしょうか

STEP
甘ったれの若殿光茂

鍋島藩の甘やかされて育った殿となるべき若者と周囲の反目、それでも忠節を尽くそうとする者たちの苦悩、

どこ吹く風の杢之助の見せる戦国時代気鋭のいくさ人の働きに、はらはらしながらも目が離せません。

著者 隆 慶一郎氏について

1923年生まれ。東京大学卒業。1957年に脚本家になり、1984年に小説家デビュー。第一作『吉原御免状』は直木賞候補となった。『影武者徳川家康』、『捨て童子・松平忠輝』など執筆。『一夢庵風流記』は柴田錬三郎賞受賞。1989年に急逝、わずか5年の小説家活動であった。

葉隠とは

本書『死ぬことと見つけたり』の基となった本で、江戸時代に書かれた書物。山本常朝が武士の覚悟を説いた言葉を田代陣基がまとめたもの。武士道とは死ぬことと見つけたりも葉隠れの有名な言葉になります。

武士道とは

武士道とは、一体何だったのでしょうか。

武士の時代には、直接的な武士の教科書のようなものはなく、中国の孔子や孟子の儒教の論語などがよく読まれていました。愛国心と祖先を大事にする道徳心は、一言であれば【義】であり、それが主君への忠節・忠義へと繋がり、武士の骨格となったと考えられます。

現代で有名な『武士道』は新渡戸稲造が海外に向けて、日本人の道徳の源である武士の心得を外国の本や事例と照らし合わせながら多角的に説明した本だと言えます。こちらもぜひ一読して頂きたいです。

感想まとめ

斎藤杢之助は死の鍛錬により死人と成しえることによって、一切躊躇することなく瞬時に決行することができる。その上、生にしがみ付くことも微塵もないので、一見進退窮まる状況でさえ笑い楽しむ豪胆さと朴訥とした様が心地よい。また、心同じくする仲間との阿吽の呼吸、死を厭わぬ間柄に思わず嫉妬してしまいます。

現代に生きる悩み多き我々にも相通じる何かを感じ、今までの自分とは全く異なる視点から物事を考えるキッカケになると思います。

侍と主君の関係は、会社員と会社になり、どこか武士道の精神も日本人の中にあるもので、その原点を知ることによって、関係性の成り立ちと付き合い方に改めて向き合うことができます。そして、主人公の杢之助のように自由闊達に人生を歩むことの参考になるのではないでしょうか。

死について普段考えることはあまりないと思います。それをあえて死から始まることによって得られる心の自由。

自由とはお金が無限にある事でも時間が無限にあることでもなく、真の自由とは覚悟とその先にある未練を持たないことから初めて得ることができるのではないでしょうか。

死はいつも・いつでも生のすぐそばにあり、いつ訪れるのかわかりません。だからこそ、あなたは何を成したいのかを真剣に考えねばなりません。そして、行動を起こさなければなりません。私自身も含めて、この素晴らしき人生を謳歌できるように歩みたいものですね。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次